ー健康診断を定期的に受けていれば、自覚症状が出る前に病気を予防できるー
これは日本人の常識と言ってもいいだろう。
だが、欧米では現在、日本のように検査項目の多い定期検診は「それが健康につながるという科学的根拠がない」として、奨励されていない。
米国で行われた医師アンケートでは、医師の65%は「年1回の健診が必要」と答えたが、検査は血液と尿だけで十分、心電図や胸部エックス線までは必要ない、という意見が大半だったという。
ちなみに、国際的にがん検診の有効性が証明されているのは「乳がん」「子宮がん」「大腸がん」の3つだけである。
2009年度の健康診断受診者中、異常なし(健常者)は9.5%
そもそも「正常値」とは健診を実施する医療機関により異なり、その数値の決め方には適当な側面もある。
さらに現状の正常値は、性差も年齢差も画一的な点が大問題。
お年寄りもその孫も、同じ正常値であるわけがない。
「正常値」のみならず、健診項目自体が問題という見方もある。
05年の厚労省の研究班の調査では、健康診断の代表的な24項目のうち、16項目は「病気の予防や死者の減少という視点では有効性を示す根拠が薄い」と結論付けた。
研究班は、数値基準の根拠について世界中の医学論文にあたって調べ直した。
その結果、十分な証拠があったとされたのは、血圧の測定、飲酒と喫煙に関する問診だけだった。
コレステロールや肝機能調査について、報告書は有効性が薄いと結論付けている。
肝心の検査項目に医学的根拠がないとは・・・
人間ドックも期待値の割には、健診そのものの有効性が検証されていないのも事実。
もっと厳しいことを言えば、人間ドックは「見落とし」「過剰診断」、そして真逆の弊害である「医療事故」、この3つの人的ミスの温床ともいえる。
2004年2月10日日付「読売新聞」が、「がんの3.2%は診断被ばくが原因」「15か国で、日本が最も検査回数が多い」「発がん寄与度は英国の5倍」と、英国初の研究結果を一面トップで報じた。
原因は通常のエックス線検査より100倍以上放射線量が多いCT検査によるものと思われる。
推定では、45歳の1万人が全身CTを1回受けると、8人が発がん死亡し、同じ人たちが75歳まで毎年受けると(合計30回)、190人が被ばくにより発がん死亡するという調査データがある。
93年の時点で日本のCT装置の設置台数は8000台で、全世界の3分の1を占めていたが、03年には14000台へ・・・
実際、現在日本で行われている8~9割のCT検査は正当化できない不必要な検査と思われる。
04年の「ガンの3.2%は検査被ばくが原因」は、現在では少なくともその2~3倍と考えるべき。
初診時に「まずCT」と言われたら、すぐに帰宅するといった防御策が必要だ。
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