今この瞬間の輝きを

原子力村

浜岡原発

福島第一原発の敷地面積は、東京ドーム75個分、350万平方メートルにも及ぶ。
万一の事故を想定して用意されたものだ。
必ず海岸近くにあるのも、大量に冷水を必要とするのに加え、できるだけ人口密度の低い場所が選ばれるから。

現状、全国各地の原発周辺エリア、いわゆる「原子力村」に大きな混乱は起きていない。
そもそも原発半径5キロとなればほとんどが人口1万人未満の町村。マンションや戸建て物件が活発に取引されるエリアはない。

原発のある地方自治体は、交付金という点でも雇用面でも、原発なしにやっていくことはできない。
いくら福島でこうした事故が起きたからといえ、地域を離れて暮らすわけにはいかず、静観するしかないだろう。

原発を誘致すれば、事故のリスクと引き換えに巨額のカネが自治体に転がり込む。
たとえば島根原発(松江市)の場合、2010年までの7年間に国は144億円の交付金を旧鹿島町、松江市に支給している。これは建設中の3号機の分だけだ。
地域を走る「原発街道」には、豪華なヨットマリーナや荘厳な役所の支所が立ち並ぶ。

今回、運転を停止した浜岡原発もしかり。
御前崎市の場合、今年度の一般会計当初予算167億8000万円のうち、原発関連の交付金や固定資産税の総額が約71億円に上り、歳入全体の約42%を占めている。
また、御前崎市で原発関連で働く人口は1200人にも上る。その家族や、彼らを相手にしたビジネスを考えれば、立派な原発城下町だ。

いちばんカネが入るのは原発稼働前、つまり建設決定から建設中の時期で、今原発がある地域はすでに十分な恩恵を受けている。これといった産業のない地方の自治体が「多少のリスクはあってもぜひ誘致したい」と考えるのは致し方ないところでもある。
住民も同じだ。
電気料金は大幅割引、プールに図書館、レクリエーション施設が完備され、不自然なまでに美しく整備された道路が走る町。雇用も原発がある限り安泰とあれば、事故さえ起きなければ何の不満もない生活が送れていたはずだ。

だが今回、政府が浜岡原発の停止に踏み切ったことで、原子力村には大きな不安が広がっている。
原発周辺のエリアは特殊な城下町構造になっているが、それはせいぜい半径20キロ程度。
ひとたび事故が起きれば、大して恩恵を受けない30キロ~50キロ圏内も大きな被害を受けることが証明された。
今後、場合によっては全国の原子力村で”リスク”と“対価”の見直し作業が始まると思われる。

大事故を受け、住民たちがどのような「選択」をするのかが注目される。

 

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