今この瞬間の輝きを

「熟成」という食肉革命

熟成肉

A4、A5などの等級、神戸牛や神戸牛などのブランドだけが「美味しい肉」の基準だった。
その概念を覆すのが「熟成」という素材調理法だ。
健康志向の昨今、肉を美味しく、かつ健康的に食べるために「ヘルシーでタンパク質豊富な赤身肉」に向く素材調理法でもある。

熟成肉霜降り高級肉が好まれる日本で、その良さをあまり認められていなかった赤身肉を、より美味しく提供するための技術が「熟成(エイジング)」なのである。

時間を置くことによって、肉質を変質させていくことが熟成。
だが日本では熟成に関するガイドラインはまだ策定されておらず、欧米に後れをとっている点は危惧される・・・

熟成肉そこが盲点でもあるのだが、例えば肉を3日冷蔵庫に放置していても熟成と言ってしまえば熟成なのだ。

「熟成」と「発酵」はよく似た捉え方をされるのだが、「発酵」は外からの微生物の酵素で分解することで、
「熟成」は生物学的にいうところの「自己消化」が熟成だ。

 

熟成することによって、
・肉が柔らかくなる・・・ 食肉処理後の死後硬直が解けて肉の細胞が変化して柔らかくなる。
さらに肉を構成している筋組織が分解してさらに柔らかみが出る。
・旨味が増す・・・ 時間の経過とともに肉に含まれている酵素が赤身肉のタンパク質を旨みの素であるアミノ酸に分解して味が良くなる。
・独特の熟成香が生まれる・・・ 熟成に伴って生じる香りが肉の中に入り込み、焼くことによる香ばしい香りと相まってより楽しめる。

「熟成」は赤身肉に含むタンパク質を分解して旨味を出すものであり、脂の部分は熟成されない。
サシの強い5等級などの肉よりも、2~3等級の赤身が6割以上を占める肉のほうが向いている。

口に入れた瞬間「あ~、肉食ってる~!」と本能的に感じる野性的旨味と衝撃的な柔らかさ。
サシが多い肉を食べた時の脂が溶ける甘みではなく、その肉が持つ本来の味、香りが口内を満たす。
・・・その牛がどういう環境で育てられ、どんな餌を食べてきたかによって、肉の持つ味のベースが決まるという。放牧で牧草を中心に食べて育てられた健全な牛がいいのは言うまでもないだろう。

だが、ここ最近のメディアが発信する情報を見ると、何でもかんでも熟成肉として捉えられている。
中には「おいおいそれは違うやろ・・・」というものまで出始めてきたようだ。

時間とともに変質する熟成は、言ってみれば腐敗と隣合わせの現象。
正しい知識で提供することが料理人に求められる。

目の前の熟成肉だけを見るのではなく、宣伝に踊らされずに背景を確認の上、買うなり食べるなり判断していただきたい。

 

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