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最前線攻防

サイバー攻撃

世界中のコンピュータに埋め込まれた中国製「破壊ウィルス」が突如動き出す

07年9月 イスラエル空軍はシリアが密かに建設していた核開発施設を爆撃したが、その際、イスラエル軍機の編隊はシリア軍の抵抗を全く受けることなく、悠々と爆撃ミッションを遂行し、前期が無傷で帰還している。
これは、イスラエルがサイバー攻撃によってシリアの防空システムを乗っ取り、あらかじめ作動不能の状態にさせていたために可能になった。
また、昨年7月から9月にかけて、イランの核関連施設が新型ウィルス「スタックスネット」に感染し、特に中部ナタンツのウラン濃縮施設の遠心分離器の約20%が停止に追い込まれたが、これもイスラエルかアメリカによるサイバー攻撃だったと言われている。

こうしたサイバー戦のための部隊は、今や世界の20~30か国が創設している。
その最先端はやはりアメリカだが、近年特に著しく強化されているのが中国だ。
中国はまた、キューバにネット監視拠点を設置しており、北アメリカのインターネット通信のトラフィック(信号伝達)をモニタリングしている。
03年には米国防総省のネットワークから10テラバイト以上の情報が盗まれ、08年にも米政府のネットワークから大量のデータが引き出された。
アメリカ当局の捜査で、いずれも中国国内のサーバーが侵入元だったことが判明している。

09年には、複数の国の大使館やチベット解放運動組織などのコンピュータ端末1300台に「ゴーストネット」と名付けられた不正プログラムが仕掛けられ、カメラとマイクが遠隔操作されていたことが発覚した。
それだけではない。昨年は、国防総省、国務省、主要米軍基地の間の主要なインターネット・トラフィックが十数分間にわたって根こそぎ中国テレコムの回線経由になっていたこともある。

サイバー攻撃の種類にはいくつかある。
いわゆるハッキングによる情報の盗み出しと、標的のコンピュータ・ネットワークに大量のデータを送りつけてクラッシュさせるDDoS攻撃(分散型サービス拒否攻撃)と呼ばれるものだ。
しかし、今後最も警戒すべきは、あらかじめIT機器やソフトウェアのコードに製造過程で不正プログラム(マルウェア)や秘密の抜け道(トラップドア、バックドア)を密かに埋め込む手法だろう。
仕掛けた側はいつでも好きな時に、それを利用して敵のネットワークにダメージを与えることができる。
また、ロジックボムという不正プログラムを仕込んでおけば、新たにハッキングすることなく敵のネットワークを支配することも可能だ。
ロジックボムとは、外部から決まった信号が送られると起動する秘密プログラムのことで、たとえばすべてのソフトウェアを消去したり、電圧を上げて機器を物理的に破壊したり、ネットワークに繋がるあらゆるシステムを暴走させたりすることができる。
トラップドアやロジックボムは有事での発動まで厳重秘匿されるものであり、その実態は分かっていない。
しかし、主要国の防衛関係者の間では、すでに各国の防衛システム、政府系のネットワーク、電力供給や運輸調整システム、民間の通信システムなどの基幹インフラのシステムに無数に仕掛けられていると信じられている。
実際、アメリカの電力供給網システムにロジックボムが仕掛けられていたのが発見されたこともある。

今や世界のどの国でも、海外の工場で作られたチップ、あるいは海外の企業や研究所で開発されたソフトウェアが使用された機器を取り入れている。
したがって、世界の工場である中国はまず間違いなく世界中の国々の基幹システムに無数のトラップを仕掛けているはずだ。

ゲーツ米国防長官は6月4日、「サイバー攻撃は戦争とみなす」と発言した。
しかし、サイバー戦の最大の特徴の一つは、サイバー攻撃を行ったのが誰なのかを特定することが非常に困難なことだ。
仮に中国のサーバーが発信源だと分かったとしても、それが中国政府・軍による攻撃なのか、あるいは同国内のハッカーによる犯罪なのかどうかはわからない。
また、他国から中国のサーバーを介して行われた攻撃である可能性も排除できない。

サイバー戦は犯人を特定することが極めて難しく、したがって「戦争とみなす」と脅しをかけても抑止力になりづらいのだ。

 

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