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ラジエーターキャップ

ラジエターキャップ
ラジエーターキャップ

ラジエーターキャップは、ラジエーターを密閉するための単なるフタではない。
現在の冷却系統で使われている冷却方式は密閉加圧冷却式というもので、冷却経路を密閉することで冷却水の圧力を高め、冷却能力を上げている。

標高の高い山の上では、水は100°C以下で沸騰するのだが、これは気圧が低いため。
それとは逆に圧力が高いと沸点が高くなり、水は100°Cを越えても沸騰しなくなる。
冷却系統を密閉した空間にすると、エンジンの熱によって冷却水が膨張しようとするが空間が限られているために圧力が高まり、結果として沸点が高くなり、100°Cでも沸騰しなくなる。

もし沸騰してしまえば冷却水は気体になり、熱を奪ったり放出する事が出来なくなるばかりか、一気に体積が膨張して高圧になり、冷却系統を破裂させてしまう。
圧力を高めて沸点を高くしておけば、それだけ沸騰しにくくなるというわけだ。

さらに、冷却水の温度が高いほど外気温との差が大きくなり、それだけ放熱効果を高めることが出来るわけで、密閉加圧方式にはこうしたメリットがある。
しかし、あまりに高圧になってしまうと、冷却系統のホースなどに負担が掛かってしまう。

ここで重要な役割を果たすのがラジエーターキャップだ。
冷却系統内の圧力が指定圧以上に高くなると、キャップ内の加圧弁が開いて、指定の圧力になるまで余分な冷却水をリザーバータンクに送り出す。
ラジエターキャップ 働き
冷却系統内が冷えて圧力が下がると、ラジエーターキャップ内の負圧弁が開き、リザーバータンクから冷却水を吸い込む。
こうして、冷却系統内の圧力を一定に保っているのがラジエーターキャップだ。

 

ラジエーターキャップ選び

ハイプレッシャー・ラジエーターキャップ
スポーツ走行用とか、オーバーヒート防止のため、などのウリ文句があるハイプレッシャータイプのラジエーターキャップ。
純正だと0.9kg/cm2くらいがほとんどだろう。
これよりも更に圧力を掛けようというのがハイプレッシャー・タイプだ。
1.1kg~1.5kg/cm2くらいかな。
レーシングマシンなど、常に高回転を常用するエンジンでは使用される。
理由の一つは、「キャビテーションを抑える」ため。

・・・・・キャビテーションとは?・・・・・

ポンプや船のプロペラで翼面上を流れる水が加速され、水の静圧が局部的に蒸気圧以下になると、その部分の水が蒸発して水蒸気の気泡が生ずる。空洞現象とも言う。
エンジン回転数の上昇に比例してウォーターポンプの回転数も上昇する。
そうなるとキャビテーションの問題も出てくるのだが、一般市販車の常用回転域では気にするような事ではない。
そしてキャビテーションも圧力を掛けることで発生しにくくなる。
船のスクリュー例で言うなら、潜水艦だと使用域の水圧が違うから同じスクリュー回転数でも気泡は発生しにくい・・・
もう一つの理由は、ラジエーターキャップの頁で説明した、「沸点を上げる」ため。

サーキット走行、峠&ドリフト専用マシンなら必要かもしれない。
しかし、街乗りメインならどうか?冷却系統内がより高圧になることで更に負担が掛かり、冷却系ホースの破裂やラジエーター破損につながる場合がある。特に、古い車両でロクにメンテもしていない上にラジエーターキャップだけ交換するのは危険だと言える。
どうしても変更したいなら、冷却系統の消耗パーツを一新した上で、常に水漏れチェックなどを怠らないようにするべきだろう。
正確な水温計も必需品だ。キャビテーションを減らす効果にしても、ごく僅かなもの。もちろん、サーキットならその「ごく僅か」を求めるが、街乗りレベルでは必要ない。
気泡についてはもっと小難しい話もあるのだが、ここではカットする・・・

そして沸点だが。
そもそも0.9kg/cm2(大気圧を加算した絶対圧では1.9kg/cm2)でさえ沸点は約119°C(これは真水の場合で、実際のLLC『ロングライフクーラント』の場合は、濃度によって沸点はさらに上がる)
冷却水が吹き出してしまうようなら、その時点ですでに水温は120°Cを超えていることになるので、それより高圧なキャップにしたところでオーバーヒート状態が改善されるわけではない。
水温が120°Cに達する時点で正常ではないのだから、この沸点でも足りないようならキャップ以前の問題であり、冷却系全体を見直さなくてはいけない。

高圧ラジエーターキャップは「オーバーヒートしない」ではなく、「オーバーヒートしても吹き出しにくい」だけで、むしろ水温が異常に上がっても吹き出さないことからオーバーヒート状態を見過ごしてしまい、結果としてエンジンをより劣悪な環境で酷使することで大きなダメージを与えることにつながる危険のほうが大きい。

 

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