早田英志
<オレは先の見えた道を歩くなんて性に合わない>
と、安定したサラリーマン生活も家庭も捨てて、単身コロンビアに乗り込む。
75年、35歳の時だ。
そこで出会ったのがエメラルド。
早田は、一匹狼の「エスメラルデロ(エメラルド屋)」として、暴力とコカインと腐敗の国、コロンビアを生き抜いていく。それは文字どおり、身体を張った闘争劇だった。
例えば繁華街に出れば、物取りの暴漢に囲まれるのが常だ。
暴漢の手がポケットから抜き出たその時だった。
<その瞬間、すでに早田は身をよじって横蹴りを描いていた。かの右手に握られたものがキラリと光る。早田の左足刀が一直線に炸裂してナイフは宙に舞った>
これが日常茶飯事なのだ。
早田は本能の赴くまま、持ち前の度胸と才覚で、血を血で洗う抗争をいくつも乗り越えながら力をつけていく。ゲリラ200人に囲まれ、負傷して血まみれになったこともあったが、それでも常に先頭に立って体を張った。
89年には早くもコロンビア最大のエメラルド輸出業者となり、現在は鉱山を多数所有、「エメラルド王」の一人として君臨するまでになった。
彼を突き動かし続けるものは何なのか。
彼は言う。
<後悔だけはオレの人生にはない>
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